この記事は後編になります。
前編はこちら⇒https://note.com/pta_taikai/n/n71284e04fd86
7つの戦術を紹介する前に、PTA体制を維持したい側(反対側)の戦術と、入会の意思確認についての誤解について書きます。
🟨PTA体制を維持したい側(反対側)の戦術
以下の3つがあります。
🟣人間関係を作って懐柔してくる
🟣PTAに過剰な使命や責任を植付ける(学校や子供たちが困る)
🟣非協力や会長の交代などで改革を阻止する
PTA体制を維持したい側に「引き込む」、連携や繋がりと言って学校教育に「組み込む」、反対するなら「阻止する」の3つがあります。
「引き込み」は、新役員歓迎会や懇親会などですぐに始まります。「引き込まれない・組み込まれない・阻止されない」このポジションを取ることが大事です。
「組み込み」は、"連携"に注意です。上部団体、他校PTA、OBOG、地域・・・。組み込まれることで、単P単独での意思決定が難しくなり、抜け出せなくなります。
「阻止する」は、反対や非協力的になったり、場合によっては会長交代等を言ってくる場合もあります。
この3つに注意してください。
🟨入会の意思確認についての誤解を解く
従来のPTAを維持しようと「入会の意思確認をすることに反対」と言ってきますが、これは入会の意思確認を誤解してます。
そもそも、入会申込書(入会届)でする入会の意思確認は会員を集めるためです。だから入会の意思確認に反対することは、会員を集めないということになります。
全員加入(強制加入)が前提になってるから、入会の意思確認をすれば会員を減らすことになるということですが、それは逆さまで、入会の意思確認(入会申込・入会届)は、会員を集めるためにすることです。
入会の意思確認=会員を集める
ここを共有しておくことが大事です。
この共有だけで、論理的には入会の意思確認に反対できなくなります。
「入会の意思確認は会員を集めるために行うものです。それに反対するということは、会員を集めたくないのですか?」
🟪校長の反対を乗り越える7つの戦術
それでは、7つの戦術を紹介します。
①資料を揃えて説得する
②第三者提供を拒否する
③教育委員会に相談する
④会員の声を活用する
⑤非会員を増やす
⑥ディールを行う
⑦チキンレースをする
検討しやすい順番に並べています。
すべてを行う必要はありません。また、Aプラン、Bプランのようにいくつかを組み合わせてもいいと思います。
ボランティアなので「不退転の決意」までなくてもいいと思いますが、「足元を見られないようにする」ことは大事です。足元を見られると反対されやすくなります。
それでは、「①資料を揃えて説得する」を紹介します。
1.資料を揃えて説得する
資料を揃えて校長を説得するという方法は最も一般的な方法です。それをこちらの意見を言うだけでなく、戦術的に行っていきます。
説得までのストーリーを考える
以下のような説得までのストーリーを考えて、それに合った資料を用意するといいと思います。(ストーリーは一例です)
①PTAを取り巻く状況
②PTA改革の必要性
③改革の流れ
④改革後のPTA
※③④の順番は入れ替わってもいいと思います。
状況の共有が大事
「①PTAを取り巻く状況」の説明は、新聞記事や近隣の状況などを調べて揃えるといいと思います。
「PTAを取り巻く状況」の共有ができずに次に進むと周囲(学校側と役員)とのズレが大きくなります。
上図で説明すると、雨が降ってるという「状況」を共有できないと、傘をさす意味がバラバラになります。(晴れや小雨、大雨などバラバラの認識では傘をさす必要性がブレます)
PTAを取り巻く状況に対する認識も同じです。ずれがあると説明が前に進みません。
リアリティを持たせる
また、リアリティを持たせると状況の共有がしやすくなります。例えば、遠い地域のPTA解散よりも、近隣のPTA解散の方がリアリティが高くなります。
状況を説明する資料にリアリティがあるか、考えてみるといいと思います。
焦らずに、①の共有をしっかりして段階的に次に行くのがいいと思います。
校長にとっての視点を考える
「②PTA改革の必要性」は、校長にとっての視点を意識するといいと思います。「保護者負担が軽減・削減される」などは、校長に刺さらない場合があります。
負担の軽減は保護者以外にもあります。「教師の負担軽減」「休校日の活動削減」「P協の担当時の教頭の負担軽減」などを資料に入れるといいと思います。
「③改革の流れ」は、フローチャートで分かりやすく作っておくといいと思います。
「④改革後のPTA」も、校長にとっての視点が必要になります。現在のPTAの機能や役割などがどのようになって行くのか(考えてるのか)を知りたいと思います。
資料を揃えて説得する方法の課題は、話し合いのテーブルにつかない・聞く耳が無い、回答を保留されるなどがあります。
また、反対を強化してしまい逆効果になる場合もあります。資料で説明する前に、学校側や役員などの考えや様子をリサーチしておくといいと思います。また、上手くいかなかった場合のBプランを用意してた方がいいと思います。
ポイント
- PTAを取り巻く状況の共有が大事
- 校長にとっての改革の必要性を考える
- 話し合いのテーブルにつかない場合がある
- 反対が強くなる場合もあるので、事前のリサーチや、Bプランを用意する
2.個人情報の第三者提供を拒否する
個人情報の第三者提供の拒否は、「まさかPTAがそれをするとは」と思ってしまう強烈な戦術です。
入会申込書(入会届)で独自に会員名簿を集めていないPTAは、学校から保護者の個人情報を第三者提供されて運営しています。(保護者の同意を得てる場合と得てない場合があります)
その第三者提供を拒否するわけです。「保護者の個人情報の第三者提供はこれから不要です」これを学校に伝えます。
PTAが提供されることを拒否する。これに対して校長は反対できないでしょう。
「PTAが必要ないと言ってるのに、校長は保護者の個人情報を第三者提供したいのですか?」
受け取ってほしいと言うわけにはいかないので、第三者提供はしませんになります。
提供を拒否するので、PTAは独自に入会申込書(入会届)で加入者の名簿を集めることになります。そうしないと会員を集めることができません。つまり、入会の意思確認を開始することになります。
入会の意思確認=会員を集める
校長の反対があっても、入会の意思確認を実施する強行策です。電気のブレーカーを落とすような戦術です。
校長に反対はできないと分かってもらって、話し合いのテーブルについてもらうために使うのもいいと思います。
ポイント
- 第三者提供をされることを拒否することに対して校長は反対できない(反対しにくい)
- 「入会の意思確認の反対はできない」ことを分かってもらえる
- 「入会の意思確認=会員を集める」この共有が必要
- 電気のブレーカーを落とすように、一気に入会の意思確認で会員を募集することになる
3.教育委員会に相談する
第三者提供の拒否と同じように、「まさかPTAがそれをするとは」と思ってしまう強烈な戦術です。
普通、教育委員会に入退会自由のことで相談するのは、会員や非会員が多いと思います。
その固定観念に囚われず、会長や役員が教育委員会に相談します。
「保護者の同意なく、PTAに個人情報の第三者提供をしてますよ」
教育委員会は、学校を指導することになります。教育委員会の指導の元、入会の意思確認を開始する戦術です。
とはいえ、自身が会長なのにPTAを悪く言うのは難しいと思います。この戦術は、新会長になってPTA改革をする時に向いてます。
強制加入になってたり、保護者の同意を得ずに学校から個人情報の第三者提供を受けてたら、その部分を改善するために教育委員会に相談します。指導があった後に、校長と協力しながら入会申込書(入会届)を整備して、加入者の名簿を集めるようにします。
ポイント
- 保護者の同意なく個人情報をPTAに第三者提供してる場合に使えます
- 新会長になってPTA改革をする時に向いてます
- 反発を買う場合もあります
4.会員の声を活用する
改革の進め方で最も効果のある方法は、会員の声を背景に行うことです。会員への周知を同時にできます。
ただし、会員の中には、入退会自由になることに反対する人もいるので、いきなり全員に聞くよりも、はじめは賛成しそうなところから聞いていくといいと思います。
さしみ(343)の法則を参考に、最初は賛同してくれる3割くらいの層を固めて、次にどちらでもない4割の層。ここまで固まれば、反対が少なくなります。
アンケートなどは、状況を作りながらタイミングを見て行うといいと思います。
アンケートは、反対意見に対抗するのに有効ですが、設定する設問を間違えると逆効果になる場合もあります。事前に下調べしてある程度仮説を立てておくといいと思います。
入退会自由の賛否は問わない
PTAは任意団体であり入退会自由なので、PTA総会であっても入退会自由の賛否は問わないことが大事です。それをすれば「強制加入の賛否も問えばいい」という間違った意見や考えを発生させる恐れがあります。
ポイント
- 会員の声には、賛成と反対の両方が含まれるので、最初は賛同してくれそうな層を固める
- 入退会自由の賛否は問わない
- アンケートは設問を間違えると逆効果になる場合もある
5.非会員を増やす
入会の意思確認をすることに反対されても、会員に入退会自由を積極的に周知し、退会希望者を受け付けて行く方法があります。
退会者(非会員)が増えることで、入退会自由が実現します。
この後は、
入会の意思確認=会員を集める
このロジックで進めて行くことになります。
この簡単なことができないPTAがいっぱいあります。会員に伝えたらたくさん退会されるという不安があるかもしれません。
しかし、もう入退会自由は浸透しており、保護者の中には個人情報保護法をはじめPTAの在り方に詳しい人もいます。
入退会自由は非会員が発生するものです。入退会自由を消極的に周知して、非会員を発生させないようにコントロールするより、積極的に周知してPTAの姿勢や態度を伝えることの方が中長期的に見ても大事だと思います。
そこを考えないと、運営側は会員側の後手に回ることになります。
ポイント
- 会員との信頼関係構築など中長期的な観点で考える
- 役員会という密室で決めるスタイルから脱却できる
- 非会員の発生をあたり前と考える
6.ディールを行う
校長とディール(取引)を行うのもいいと思います。
例えば、一つのテーマだけだと下図(左側)のように綱引きになってしまいますが、そこにもう一つのテーマを加える(右側)ことで、どちらも一つずつの成果を手にするという形に持っていけます。
校長が反対しそうなものは他に何があるか。それを考えてみるといいです。
いろいろある中でも、上部団体の退会は候補として適してると思います。他校と足並みを揃えたい校長にとっては上部団体から退会してほしくないと思います。
「入退会自由を積極的に周知するか、上部団体を退会して会の負担を減らすか、どちらもしたいけどどう思いますか?」
入退会自由ではない方に賛成してくるかもしれません。それでもいいと思います。その場合は、入退会自由をカードにして、反対されそうなものを片っ端から賛成してもらうこともできます。
もし、入退会自由が最後に残ったら、他の戦術で反対を乗り越えればいいと思います。(第三者提供の拒否などで)
ポイント
- 一つのテーマで綱引きをしない
- 校長が反対しそうなものを考える
- 上部団体の退会を提案する機会にもなる
- どちらも反対する場合を想定しておく
7.チキンレースをする
何をしても反対される場合は、最後の手段として会長と校長のチキンレース(チキンゲーム)があります。ディールの延長と考えてもいいと思います。
チキンゲーム(英: chicken game)とは、別々の車に乗った2人のプレイヤーが互いの車に向かって一直線に走行するゲームである。日本ではチキンレースとも呼ばれる。
Wikipedia : チキンゲーム
激突を避けるために先にハンドルを切ったプレイヤーはチキン(臆病者)と称され、屈辱を味わう結果になる。
チキンレースは、"PTAが解散になっても構わない"と思える方が勝ちます。
解散の他にも「会長の退会」などもありますが、それよりも解散の方が効果が高いと思います。ただし、会長が解散したくない・解散までは考えたくない場合はこの戦術は使えません。
そこで前もってPTAの解散について考えてみるといいと思います。
PTAの解散について
今までPTAでは、「解散」「P協退会」「会長の退会」の三つは、すごく重要な事なのに議論もあまりされずタブーに近い扱いでした。だけど、少子化や入退会自由による会員数の減少によって、解散を選択するPTAが増えてきました。
もはや解散はタブーではなくて、運営の選択肢の一つと思います。そうは言っても、学校、上部団体、地域など、PTAをあてにしてるところは多いので、解散は簡単にできるものではありません。
PTAが無くなると困る存在のために、PTAを無くすことはできないと思っている会長・役員は多いと思います。
あてにされているから無くせない。しかし、PTAをあてにしてるところが、PTAに頼らず自分たちでやれば済むことです。「PTAが無くなって本当に困るのは誰か」をよく考えると、本当に困るのはPTAでないことが分かります。
PTAは任意団体なので解散もあります。そのPTAが無くなって困るようなことがあるほうがおかしいと思います。
解散はPTA総会で決めることになります。だから会長が解散すると言っても解散になるわけではありません。総会で承認されて解散になります。とは言っても、会長に委任状が集まり過半数以上の議決権を持てば、会長の方針通り承認されるでしょう。
会長の交代を言ってくる場合があります
会長の交代を言ってくることはPTA改革でよくあります。校長が提案してきたり、ベテラン役員やOBOGから声が上がったりいろんなケースがあります。
会長の交代について
会長の交代は、代行など規約に書かれている範囲内に限られると思います。いろんな規約があるのでハッキリと書けません。規約を確認しておくといいと思います。代行でなく交代の場合は、総会の承認が必要だと思います。
チキンレースとなると会長の交代を言ってくる可能性は高いです。なので、会長候補が他にいないかをチェックしておくことは大事です。また、チキンレースを総会が近づくタイミング(短期間)で行うなど工夫が必要になります。
会長の孤立化、役員会の分裂などの可能性もあります。最低でも孤立化だけは回避するように注意が必要です。
ポイント
- PTAの解散について考えておく
- 会長の交代を言ってくる場合がある
- 会長の孤立化や役員会の分裂などの可能性もある
🟨校長の反対を乗り越える方法はたくさんあります
校長から反対されてそれで無理だと思ってしまうとそこから前進しません。また、反対という言葉に反感を持っても前進しません。
反対というのは意見です。それを一旦受け入れて考える事が大事と思います。流されるのではなくて。
「なぜ、反対するのだろう?」
「なぜ」と思う事が大事です。その理由を勝手に決めつけないで聞いてみるといいと思います。
「参考までに反対する理由を教えてください」
退会マニュアルで書いた「退会理由を書かない」の逆です。「反対」は校長の主張になります。だから理由を聞いていけば解決の糸口が見つかると思います。
入会の意思確認を始めるのも大変ですが、P協の退会も周囲からの反対に遭います。
それでも最近では退会も増えてきてるので、タブーではなくなってきてます。検討を始めてるPTAも増えてきてると思います。
P協退会での気付きを中心に書いてます。
メリット・デメリットの整理、校長の説得、退会後の対策等を書いてます。
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また、PTAは地域や構成する人など様々な状況の違いがあります。この記事はPTA改革を保証するものではありません。あくまで参考としてお考え下さい。